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伊藤忠商事が商用の電気自動車(EV)に参入することが、6月26日分かった。自動車部品世界3位の独ZFグループと組み、令和8年にも積載量1~2トンクラスの商用EVを国内で売り出す構想だ。国産の小型EV商用車の価格は1千万円を超えるが、高価な電池をサブスクリプション(定額制)にする新しい販売方法で、車両価格についてエンジン車並みの500万円台を目指す。サブスク料金と充電する電気代を合算しても燃料費より安くなるとみており、運行コストの安さもアピールし、拡販する。
大手総合商社で商用EV事業に進出するのは伊藤忠が初めて。同社は商用EV事業を核に、EV向け充電施設の整備、車載電池の再利用とリサイクルまで一貫して展開する態勢を12年ごろまでに構築する。
販売する商用EVは、宅配便などを扱う物流会社での利用を想定している。ZFの日本法人、ゼット・エフ・ジャパン(ZFジャパン、横浜市中区)がモーターや電池などの基幹部品を供給。車台製造は外部の製造会社を活用し、車体は顧客のニーズに合わせて設計する。電池は市販されている箱型の容量35キロワット時のもの3個を搭載し、1回の充電で約400キロ走れるようにする。
伊藤忠は、EVで使用できなくなった電池は、工場などに設置して太陽光や風力で発電した電気をためる電力貯蔵システムで再利用する。さらに能力が劣化して廃棄する電池からリチウム、ニッケル、コバルトなど有価性金属を抽出し、リサイクル原料として活用する。電池のライフサイクルを通じてサブスク料金を抑えていく。
伊藤忠は、年内に事業性を判断して来年にもZFなどと合弁会社を設け、商用EV事業を推進する。物流会社は脱炭素に向けて配送車のEV化を進めようとしている。ただ、国産の商用EVの価格は高く、価格が安い中国製を試験的に導入する企業もあり、日本の出遅れが指摘されていた。
トヨタ自動車とスズキ、ダイハツ工業の3社で共同開発した軽自動車の商用EVが、今年度中にも実用化される計画がすでに発表されている。伊藤忠・ZFグループの参入で、国産の商用EVの開発競争が激しくなりそうだ。
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■ZF ドイツ南部のフリードリヒスハーフェンに本社を置く自動車部品メーカー。電装、車両制御関連の主要部品を世界の自動車メーカーに供給し、2021年の世界市場シェアは独ボッシュ、日本のデンソーに次ぎ3位。世界41カ国に260の生産拠点を構え、22年売上高は438億ユーロ(約6・8兆円)。ZFはドイツ語の「Zahnradfabrik(歯車工場)」の略で、1915年にツェッペリン飛行船用の歯車メーカーとして創業。現在も株式の9割超をツェッペリン財団が保有する。